シブヤから遠く離れて    2004.3.26 Bunkamuraシアターコクーン

昔から小泉さんスキーのわたしは、この舞台は迷わず決められた。
前に小泉さんと小林聡美さんの舞台のときは迷って行かずに後悔したけど。
今回は迷わなかったね。何かのついでに、ではなく、このために上京を決めました。

さて、今回ほどレポートするのは難しい。
まずストーリーが一言でも二言でもたくさん言葉を並べても伝えにくい。
観た人それぞれ違うストーリーを感じているかもしれない。
受け手側にとらえ方を任せているっていうか、そんなお話。
人と人の関係が複雑に入り乱れていて、純粋に小泉さんとニノのラブストーリーだけではない。
みなさんにわかりやすいようにストーリーを伝えるのはどんなに時間があってもまず無理なので、本当に思いつくままに感想を書くことにします。

【お話&感想】
舞台は渋谷南平台あたりの住宅街の一角。メイン通りからはずれたまるで隠れ家のような古びた廃屋。
庭には黒くひからびたひまわりが散乱している。

ナオヤ(二宮和也)は、昔からシブヤの街で遊んでいたどこにでもいるいまどきの青年。
でもどこか暗い過去をもっているような。
ケンイチ(勝地涼)はナオヤの友達。この廃墟に昔住んでいた。
ナオヤは昔ケンイチから借りた2000円を返しにケンイチの家へやってきた。
ケンイチはナオヤに黙って引っ越したことが気にして、ナオヤを待っていた。その日はケンイチの誕生日。
しかしナオヤはケンイチの誕生日を忘れていた。
ナオヤはケンイチの前では、気の弱い人間だった。
ケンイチの誕生日を忘れていたこと、いつどこで借りた2000円なのか覚えてなかったこと、万引きした時計をケンイチのお母さんからもらったものだと嘘をついたころ、責められても何も言い返すことができなかった。
こどものころもそうだったのか・・・ケンイチに責められ、どうしようもなくなってそれでナオヤはケンイチを刺してしまったのだろうか。

マリー(小泉今日子)はシブヤで仕事をしているオンナ。この廃墟にお客を連れ込んでいると言われている。
マリーはわけありで、この廃墟に身を隠していた。
アオヤギ(杉本哲太)はマリーのお客で、マリーをこのシブヤから連れ出してあげたかった。
本気でマリーを好きだった。しかしどこか遠くへ行こう。というアオヤギの愛をマリーは受けいれることができなかった。

マリーは、彼女の庭でケンイチをさがすナオヤに出会った。
ナオヤにとっては、そこはケンイチの家だった。マリーに責められるナオヤはケンイチの前ではみせなかった凶暴な一面をみせる。
ナオヤもマリーもいまの生活を守りたかっただけなのかもしれない。

マリーの平穏な生活は、勝手に踏み込んでくる人間達によって壊されていく。
マリーがこの廃墟に来る前に済んでいたマンションの雇われ管理人フクダ(立石涼子)。
アオヤギの会社の同僚のフナキ(勝村政信)、アオヤギの父(清水幹生)、妹トシミ(蒼井優)。
金や欲望で汚れ、人を傷つける。
そしてナオヤもまた同様に忘れていた過去を呼び戻させられる。

マリーもナオヤも寂しい人間なんだと思う。
マリーは本当の愛を探していたのだと思う。本当の愛を知らないからアオヤギの愛を受けいれることができなかった。
そして本当に好きだった人へも愛を告げられなかった。そうやっていつも愛を失うマリー。

ナオヤは嘘をつくことで自分を守ってきた。
そんなナオヤを責める強くて正しいケンイチがナオヤにとってはいつの間にか邪魔な人間になってしまったのか。
ケンイチの幸せはナオヤによって壊されてしまった。そしてナオヤも友達を失った。

寂しい人間同士お互いに傷つけ合うふたり。

マリーは結局追っ手見つかり殺された。
金や欲望や人間のもつ汚いものに殺された。

マリーの魂がナオヤに生きることを伝えた。
どんな人間にも明日が来るってことを。そこから何かが始まるってことを。
マリーとナオヤの頭には雪が降ってきた。冬の始まり。
寒いはずなのに、マリーとナオヤはとても暖かい気持ちになっていた。自分に素直になれたことによって。
庭一面に咲き乱れた赤いゼラニウムが一層それを増した。

これがあたしの感じたお話です。
同じ舞台をみてもきっと、みな違う感じ方をしたと思います。あしからず。

小泉さんとニノのラブストーリーってさぞ美しいお話なんだと、シブヤが舞台ならましてやと勝手に想像していましたが、なんとも切ないお話でした。
演出も脚本も出演者もみんな素敵で一流だなーと。

黒いひまわりがこのお話の寂しさを象徴していると思いました。
劇場に入った瞬間に、そこは建物の中ではなく実在する渋谷の一角に思えました。
そのひまわりが、それまで持っていた期待とか鼓動を、静寂したものに変えてしまったのでした。

物語は静かにゆっくりと流れました。
そのスピードがじっくりと染み入ってきました。

人間の汚い部分を、こんなにも透明に表現できるふたりに、なんど胸を締め付けられたか。
黒いひまわりと赤いゼラニウムが対照的にこのふたりの心の変化を象徴したようでした。
胸がぎゅーーと苦しくって、それでいて虚空な、でも安心するような暖かい感じ。
とっても不思議な気持ちになりました。
誰かをものすごく好きになったときのような、苦しくていとおしい気持ちに似た、そんな感じでした。
そんな気持ちでシブヤのセンター街を歩いたとき、この物語が虚構のものではないような気がしました。
この道からちょっとはずれたところにマリーとナオヤがいるような気がしました。

ニノは少年の透明感と残酷さを演じ分けて、20歳なのにすごい俳優さんになるんじゃないかと思いました。
ナイーブな弱い部分と、幼い強がりといろんな表情をみせてくれました。
小泉さんはかっこいい。マリーの汚い部分も小泉さんが演じると嫌味がなく、むしろ悲しく寂しいものになっていました。
そして小柄なはずの小泉さんは舞台の上ではとても大きな存在感がありました。
最後の挨拶での表情はマリーではなく女優小泉今日子で、またまたかっこいいと思いました。
今回わたしの中で一押しなのは勝村政信さん。ものすごくかっこいい。大人のオトコを演じています。
皮膚の色とかしわとか勝村さんのひとつひとつに今までの年輪が感じられて、けっして歳をとったという意味ではなく、いい歳のとり方をしている大人だなーと思いました。
勝地くんは間合いがうまい。若干17歳とは思えない。
演じた役がこの間までのテレビの役と似ていたので、かぶったかなという感は否めないけど、今回と全く正反対の役をどう演じてくれるのか楽しみでもあり。

わたしにとってはこれが初めての本格的なお芝居だったように思われます。
そしてこれまで、観たいなーと思っても、遠いからと交通費をしぶってあきらめた舞台が何本もありましたが、今回の観劇でこれからは『いいお芝居』を見るためには時間とお金を惜しんじゃいけないなってはっきり思ったのでした。
といっても、その『いいお芝居』にはジャニーズ事務所の誰かがきっと出演していることと思いますが・・・

追伸:表現力が乏しく、構成力もなく、いたずらに書きなぐることしかできずにすいません。
心に残る本当に素敵な舞台でした。

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